私達の暮らしと税金
高校生の作文優秀作公開
京都府租税教育推進連絡協議会賞
命の税金

京都府立莵道高等学校 一年
武市 太陽

 僕の右腹には手術跡がある。一歳の時、腎臓あたりに小児ガンを患ったそうだ。手術をしてその後十一歳までの十年間一年に二回定期検診のため通院していた。そのおかげで再発することもなく大切な友達や家族と過ごすことができている。

 十五年前の一歳児検診の時に尿の検査で異常がみられガンが発覚したそうだ。最近、祖父と僕の病気の話をする機会があり、話していると「じぃちゃんばぁちゃんもあんたのお父さんお母さんも毎日入院しているあんたのところに行っては大丈夫かと心配していたんだ」と少し涙ぐみながら語っていた。確かにアルバムに載っていた入院中の僕の姿は管が常に体のどこかに刺さっており、心配せずにはいられない格好をしていたのを覚えている。

 小学校四年生の頃、僕は手塚治虫さんのブラックジャックという漫画を読み、手術に莫大なお金がかかることを知った。そこでふと自分の手術はいくらかかったのかと気になり母に聞いてみると、「一日二〇〇円」という予想よりもはるかに安い金額が母の口から飛び出た。「なんでそんなに安いの?」と聞き返すと、「税金に助けられたのよ。」と教えてもらった。

 当時の僕は税金など気にも留めていなかったので特に知ろうとはしなかったが、今になって思うと「税金なんていらんやろ」と言い張っていた自分が恥ずかしく思えた。なぜなら自分が今生きているのは「いらんやろ」と言い張っていた税金のおかげだからだ。どこかの誰かが納めてくれた税金で生きることができていると思うと感謝してもしきれないものがあった。

 また、僕が税金に対する見方を改められたのは言うまでもない。税金を納めることに前向きになれず反対していたところもあったが自分が救われたように自分が税金を納めることで誰かの命を救うことができる。誰かの未来を照らすことができる。そう思うと後ろめたかった印象の税金が一気に変わった。誰かの命を救うという自分じゃ手の届かないところにあると思っていたことが実はそう遠くなかったと思うと少し嬉しくなった。

 今回改めて自分の命を通じて税金について考えることで日々の生活で忘れていた支えを感じることができたと思う。何のために税金を納めるかは人それぞれだと思うが、僕は、恩返しとお返しの意味を込めてこれからも税金を納めていきたい。税金を納めるということはただの義務なのではなく、命を照らし、命を支える太陽なるものだと思う。