私達の暮らしと税金
高校生の作文優秀作公開
京都府租税教育推進連絡協議会賞
「旅行」が教えてくれた税の意味

京都産業大学附属高等学校 二年
笹山 美咲

 水の流れる音。外に広がる夜景。そんな光景の広がる温泉が好きだった。コロナ禍までは、毎年休みに、家族旅行に出かけていた。京都で生まれ育った私は、嵐山など観光客で賑わう京都特有の地が好きだが、非日常感が味わえる旅行も楽しい。旅行では観光以外に、宿も楽しみの一つだ。中でも温泉は、旅行でしか入れない私にとって目的の一つと言って良かった。コロナ禍で簡単には旅に出られなくなった今、宿を中心とした観光番組を目にした。良い宿泊地だなと思いつつ見ていると価格の紹介に入る。そこには「入湯税込」と書かれていた。その言葉に引っかかりを覚えた。旅行に行った際温泉には幾度となく入ってきたが、支払いは両親担当であり、入湯税について考えたことがなかったのだ。

「温泉に入るだけなのに、なぜ税を払わなければいけないのだろう」

 それが最初に思ったことだった。正直なところ、楽しみである温泉に入った時にまで税を払うことに良い気はしなかった。温泉で税を集め、何に使うのだろう。そう思い、入湯税について調べることにした。

 入湯税は入浴施設などで温泉に入った際に発生する地方税で、浴場がある市町村が課す。環境衛生施設か鉱泉源の保護管理施設、消防関連施設の整備、観光施設の整備を含む観光の振興費に用いると決まっている。私の住む京都市は、観光宣伝・振興事業中心に、温泉観光推進事業、温泉利用許可施設への助成事業などに使われていた。京都市の温泉利用許可施設では、上限十万円で補修等の費用の半分が補助される。入湯税がなければ、快適な温泉は減り、観光施設の振興もされず、街の盛り上がりに欠けるだろう。つまり私が好きな、京都の観光施設が賑わう町並み、旅行先の手入れが行き届いた温泉、その地域の観光は入湯税に支えられていたのだ。温泉で払った税が、その街の観光を促進する。回り回って、自分たちの街の活性化や社会を支えることに繋がる。入湯税で観光を楽しみつつ、観光や社会の発展に寄与できるのだ。そう思うと、入湯税に疑問を持っていたことが嘘のようだった。

 税は、お金を払う面から良く思われないことも多い。しかし、税で海外からも愛される日本観光が成り立っている。私たちでも自分の住む街、旅先で利用する人も多いであろう温泉を支えられるのだ。

 税は思わぬところから自分に繋がっている。それを理解し、多くの人が生きやすい社会になるための手助けや、社会の発展に寄与する。そうできる人間でありたい。成人年齢の引き下げで「大人」が近づいた今、私たち世代の一人一人が、目先の税の支払いだけを見ず、必要性を理解することが大切といえるだろう。