私達の暮らしと税金
高校生の作文優秀作公開
京都府租税教育推進連絡協議会賞
祖父の最期を支えてくれた税金

京都府立洛北高等学校 一年
 井上 侑宇人

 税金というものに反感を抱く者は少なくない。固定資産税や住民税など高校生の僕にはまだ分からない税金がたくさんあるけど消費税が上がるだけでもあまり良い気がしないのが正直な所である。しかしそれは自分が税金を払うことの長所を感じる場面が少ない未成年という立場ゆえのことだと思う。

 昨年、僕は祖父を亡くした。その3ヶ月ほど前のこと。僕は祖父母の家を訪ねた。すると玄関と階段に真新しいスロープが設置されていた。「なるほど。」と僕は思った。衰弱している祖父と力の弱い祖母が散歩に出かけたり、2階に上がることができていたのはこのスロープが助けてくれていたからだと僕は確信した。よく話を聞くとこのスロープは税金による助成金で作られた事が分かった。このときから僕の税金に対するイメージは一変した。このときまで税金は道の整備や役所の建設などのことに使われている印象が強かった。でも、一般家庭の支援にもたくさんの税金が使われていたのだ。

 実際に、祖父や祖母が支援を受けていたのはリフォームだけではなかった。毎日、祖母だけでの介護は難しいから。と週に何度もお世話になったデイサービスセンター。最期には、もう自分で病院に行けなくなってしまった祖父の自宅に足を運び、一生懸命診察して下さった病院の在宅診療の先生。「二十四時間いつでも呼んでください。」と自身も子育て中にも関わらず夜中でも何度も駆けつけ祖父を支えて下さり、最期には祖母と一緒に祖父を看取って下さった看護師さん。それに加え、それまでに受けた高度な手術や大量のお薬。全てに介護保険や、医療保険、障害者手帳等が使われていた。もし、このような公的な補助がなければ、到底祖母一人で祖父を介護することは難しかっただろう。祖母はこのような制度にもちろん感謝しており僕はこのことをきっかけに興味をもった介護保険制度を調べることにした。

 介護保険制度は、四十歳以上の方が納める介護保険料を税金で運営されていますと記載されていた。税金が一番多く使われているのは社会保障費で、年金、医療、福祉、介護がその中身だという。急速に進む少子高齢化で納められている介護保険料では介護事業を維持するのが難しい為税金が使われているのだ。

 これから益々進むであろう少子高齢化に向けて、国民全員が安心して暮らせる為の社会保障制度を維持する事は相当困難だというのは高校生の僕にでも分かる。わかるからこそ僕も税金をしっかり納めていかなければいけないと思った。と同時に、豊かで安心して暮らせる社会保障制度や持続可能な税制構造の役割について、人任せにせず、僕たち一人一人が考えることが必要不可欠だと思った。祖父母が護られた様に、僕たち世代が支えていく時代になっても、国民全員が守られている社会が持続できるようにと強く願う夏休みだった。