私達の暮らしと税金
高校生の作文優秀作公開
大阪国税局長賞
海を越えた税金

京都教育大学附属高等学校 1年
寺岡 駿

 「この碑板は、施設建設に際し、日本国政府が我が国に行った資金協力に対する感謝の意を表するものである」という銀色の金属プレートを見たことがあるだろうか。クアラルンプール国際空港やバンコクの地下鉄駅構内で見ることができる。また、ホーチミン郊外の高速道路建設現場や、カンボジアのアンコールワット遺跡の修復現場でも同じ内容の看板を目にした。

 アジア諸国への旅を始めた小学生の頃から、その鈍く光る銀色のプレートは、なぜか僕の心にひっかかる存在だった。日本はなぜ世界の国々の様々な施設の建設や修復に資金協力しているのだろう。長年の疑問を胸に、僕は海外への資金協力について調べ始めた。

 日本は、経済協力という形で、発展途上国の経済発展や福祉の向上のため、資金や技術提供による協力を行っている。財務省のH Pによると、平成31年度の経済協力費は、5021億円にのぼり、アジアの国々を中心に、道路、橋、鉄道、発電所などのインフラの整備、そして各分野の人材育成や教育支援に拠出されている。

 経済協力費の原資は税金。国民が納めた大切な税金が、海を越えて発展途上国の問題の解決のために使われていることを意味している。税金の無駄遣いではないかとの批判があるとも聞く。しかし僕はそう思わない。実際、旅の途中、何度も現地の人々に助けられた。大きな荷物を背負い道に迷っていると、「日本人か?一緒に行くよ」とわざわざ家から出てきて、道案内をしてくれたマレーシア人のおじいさん。日本語が話せる世代で、日本が大好きだと教えてくれた。また、カンボジアではタクシーの運転手のおじさんが、日本の支援で造られた橋を渡りながら、日本の良いところを逆に熱く語ってくれた。そんな経験から、一次的に発展途上国のために使われた経済協力費は、二次的には日本の信頼性、存在感を高め、イメージアップに大きな役割を果たしていると僕は実感している。

 僕たちは、公共サービスの費用を「税金」という形で負担している。特に海外への経済協力は、国民にとって一番見えにくく、効果を感じにくい分野かもしれない。しかし今日、交通や通信活動、経済活動は世界規模となっている。日本が途上国を支援することは、途上国の安定、発展に繋がり、ひいては日本自身の安全や更なる発展を支えることにもなっているのだ。

 海外で見かけたあの鈍く光るプレートは、僕が買い物の際に支払った消費税が海を越えることを教えてくれた。税金の使われ方を知ることは、納税と同じく国民の義務だと思う。